毎日新聞社によれば、指定暴力団の匿名グループが、謎の中国人グループと手を組んで、海外の仮想通貨取引所に口座を開設して2016年より2018年までの間に約300億円に相当する仮想通貨が日本円に換金されたと報じている。
なお、この事実は換金に携わったいわれる中国人グループの男性が明かしている。この中国人男性によれば海外の仮想通貨取引所の規制の緩さを利用して、日本と海外の複数の仮想通貨取引所の口座間を多種類の仮想通貨に変えて送金することで、最終的に海外の仮想通貨取引所で換金していたと明かしている。
仮想通貨を利用したマネーロンダリングの方法と手順
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謎の中国人グループが暴力団から預かった資金を日本の仮想通貨取引所でビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨に交換
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Yobit(ヨービット)やHitBTC(ヒットビーティーシー)などの取引所5、6箇所に小分けして送金(送金する際、本人確認の必要が要求されない。=匿名で送金が可能)
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さらに匿名で所有(購入)することができるZcash(ジーキャッシュ)やMonero(モネロ)、DASH(ダッシュ)などに交換
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現地で待機していたグループの一員が経由させたコインを現地の法定通貨に換金する、もしくはその一部を海外にあらかじめ用意していた銀行口座へプールする
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日本との商取引を装って換金した現地通貨を日本円に換金して日本の金庫番と呼ばれる暴力団グループへ送金する
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金庫番は受け取った金をさらに次のマネーロンダリングの資金にする
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受け取った現金を小分けにして中国人グループへ渡す
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同じことを繰り返す。
なお、ジーキャッシュやモネロ、ダッシュを取り扱う日本の取引所はコインチェックのみであり、マネーロンダリングの温床になっていることを指摘されている。現在、コインチェックではこれら3つの仮想通貨の取り扱いを廃止する方向で協議しているとのこと。
マネーロンダリングとは?
ロンダリングとは「洗浄する」「きれいにする」「洗濯する」などの意味があり、これにマネーを付加することで「資金の洗浄」を意味する。
マネーロンダリングが資金洗浄と言われる理由は、うす汚い銭(犯罪で得た金)を複数の銀行口座間を巧みに移動させて資金の出所や流れを分からなくしてしまい、その行為全体を俯瞰して見れば資金をキレイに洗浄しているように見えるからである。
マネロンの金の出所
- 詐欺
- 違法賭博(ノミ行為など)
- 誘拐などの身代金
- 脱税
- 粉飾決済
- 盗品売買
- 贓物(内臓)取引
- 偽札発行
- 海外への不当な額の現金密輸
仮想通貨を用いたマネーロンダリングの対策はできないのか?
現状においての仮想通貨取引ではブロックチェーンのブロックの内容を履歴として参照はできるものの、名前が記載されているわけではないので、その取引が誰がいつ行ったのかまでを調べるのは不可能だといえる。もしくは仮に可能であったとしても、かなり長期間を要しての調査が必要になるのでいずれにしても不可能に近いことには変わりない。
しかし例えば仮想通貨のブロックチェーンシステムは仕様の変更が可能であることから、IDのような個人を特定できるようなものをプロトコルレベルで埋め込むことができればマネーロンダリングへの対策は可能といえる。
ただ、既存のブロックチェーンシステムの仕様変更ともなれば変更に莫大な資金が必要になる上、マイニングの遅延なども懸念される。さらに個人を特定するID情報を埋め込むとなると個人情報の漏洩も懸念されるなどのリスクもある。他に取引手数料の上昇も懸念されたり、実装にも時間とタイミングが求められることから仮に計画が立っても先延ばしになりやすい。
そこで手っ取り早いのは世界レベルでウォレットを利用する際に本人確認を行えば、少しはこうしたマネーロンダリングを防げる手段になりえる。
ちなみにリアル世界の銀行口座の話をすれば、金融庁も2007年1月から本人確認法を施行して10万円以上の金をATMで振り込めないようにしている。現在10万円以上の金を振り込む時は窓口の行員に本人確認書類を提示した後にできるようになっている。
こうした処置を仮想通貨のシステムに実装できたのであれば仮想通貨の信用性も益々上昇し、さらなる利用者の増加が期待できる。